腰痛を訴え受診される患者さんの中にはお尻の痛みを訴える方もいらっしゃいます。
このような患者さんでは仙腸関節障害を疑う必要があります。
今回の10秒まとめ。
① 臀部痛と大腿部痛や鼠径部痛を認めた場合、仙腸関節障害を疑う。
② 痛みの箇所が明確、仙腸関節を圧迫すると痛みが誘発されるのが特徴。
③ 診断のために腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症を否定する必要がある。
④ 治療には、仙腸関節部の安静を確保するために骨盤ベルトなどで固定する。
⑤ 仙腸関節部へのブロック注射が効果的。
⑥ 腰椎の可動性低下や股関節筋群の拘縮が原因の可能性もあるため、運動療法による介入も検討する。
仙腸関節障害とは?
仙腸関節とは、背骨の基部にある仙骨と骨盤を形成する腸骨で作られた関節です。
(日本整形外科スポーツ医学会の仙腸関節障害のページより抜粋 http://www.jossm.or.jp/series/flie/025.pdf )
仙腸関節は、骨盤より上にある上半身の重みを骨盤に伝える部分であるため、複数の靭帯によって非常に強く固められ、動きの少ない関節と言われております。
中腰での作業や繰り返しの負荷など何かしらの原因で仙腸関節を損傷してしまうと、仙腸関節周囲に痛みを認める場合があります。これが仙腸関節障害です。
仙腸関節障害の症状は?
特徴的な症状
- 仙腸関節部(いわゆるお尻)の痛み
- 痛みの箇所を指させる
- 大腿後方外側や鼠径部の痛み
特徴的な症状として、仙腸関節部の痛み(両側性or変則性)、が挙げられます。
腰痛を訴えて受診される患者さんの中に、腰というよりは仙腸関節の場所(いわゆるお尻)の痛みを訴える方が多く、そのような方では仙腸関節障害を強く疑います。仙腸関節障害の患者さんでは、痛みの場所を指さすことができるもの特徴です。
また、大腿後外側の痛みや鼠径部の痛みを訴える方もいらっしゃるのが特徴と言えます。
仙腸関節障害の診断は?
診断
- 似たような症状を引き起こす疾患(腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症)の除外
- 仙腸関節部の圧迫による疼痛の誘発(Newton変法)
同じような痛みを認める疾患に腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症と呼ばれる病気があるので、レントゲンやMRIにてこれらではないことを確認する必要があります。
上記疾患を否定し、伏臥位で仙腸関節を上から圧迫し疼痛が誘発される場合、仙腸関節障害と考えます。
仙腸関節障害の治療は?
治療
- 腰痛ベルトや骨盤ベルトによる仙腸関節の固定
- 抗炎症薬の内服
- 仙腸関節ブロック
- 運動療法(リハビリ)
仙腸関節の安静を確保するため、骨盤ベルトやコルセットによる固定を行います。また、抗炎症薬(ロキソニンなど)の内服も行います。
疼痛が強い時には、仙腸関節へのブロック注射も非常に有効です。
仙腸関節障害は腰椎の可動性低下や股関節筋群の拘縮が原因の可能性もあるため、当院ではブロックによる除痛後、運動療法による介入も検討します。