今回は、2種類の信頼について解説します。
人間的信頼と能力的信頼
前回、人間の認識の過程には論理的認識と感情的論理的認識の2つの過程があることをお話し致しました。
人間が物事を認識するときは、この2つの過程の両方が関わっています。そして、人を信頼するときにもこの2つの認識は働いています。
1)能力的信頼
論理的認識による信頼は、能力的信頼と呼ばれます。
例えば、医師は一般的には社会的に認められた資格であるため、初対面でも医師という肩書きだけで、肩書きがない場合よりも信頼を得やすい立場にあります。このように、何か特別な資格を持っていたり、著書があったり、企業の役員であったり、社会的に意義のある活動をしていたり、など肩書きや特別な活動をしている人物に対して、人間は信頼しやすい生き物です。これは、『これらの能力がある人物は信頼できる人物であろう』という論理的認識(正しいかどうかは別)に立脚しています。
2)人間的信頼
感情的認識による信頼は、人間的信頼と呼ばれます。
人間的信頼とは、その人物の行動や考え方そのものを信頼すること意味します。<br />この過程には、では、どういった考え方や行動に人は信頼感をいただくのでしょうか?これには、人間が根源的に持つ欲求と深く関わっています。何故ならば、根源的な欲求を満たしてくれるような行動・考え方をする人物に感情が揺さぶられ、その人物を人間的に信頼するようになるからです。
以前、人間の根源的な3つの欲求についてお話を致しましたが、ここでもう一度確認しておきます。
生存欲求:死にたくないと願う欲求
関係欲求:他者から認められたい、周囲の人々と仲良くしたいという欲求
成長欲求:今よりも成長したい、新たな知識を手にいれたいという欲求
これらの欲求を満たす行動や考え方をする人物を、人間は本能的に信頼するようになります。
戦国時代などの乱世の時代では、生き残る事に長けている人物が信頼を集めました。多少残虐性があっても、戦争に強いリーダーがとても信頼を集める時代であったのです。
現代社会でも、企業は生き残りをかけて戦っているため、今でも生命力の強いリーダーは信頼を集めることもありますが、それだけではダメです。現代社会で組織のリーダーとして信頼を得るためには、関係欲求と成長欲求も満たすような存在でなければなりません。
感情的認識が論理的認識を凌駕する。
能力的信頼が高い人物が、人間的にも信頼できる人物であれば、心からその人を信頼するようになります。
しかし、そもそも人間的に信頼できる人物であれば、別に肩書きや特別な資格・活動などがなくても、その人物を信頼するようになります。これは、感情的認識が論理的認識を凌駕することからも理解できます。
考えてみると、人間的信頼を得ている人は、意識的または無意識に相手が根源的に持つ欲求を満たすような行動をとっていることが多いです。
人間的信頼を高めることは、信頼を獲得するのに最も大切なことです。そして、人間的信頼を高めるために、関係欲求や成長欲求を刺激できる存在になる必要があります。