今回は、未来のPLの書き方についてお話をいたします。
BSやPLについて苦手意識を持っている方は多くいらっしゃるのですが、実は全く難しいことではありません。加減乗除ができれば問題なく理解できます。しかし大切なことは、これらの数字をどう使うかです。PLはある時期の売り上げと支払いの関係を示したものですが、これはあくまで過去のものです。この過去データをもとに、未来を描いていきます。
下から積み上げて未来の損益計算書を描く
未来の損益計算書は、下から、つまり、当期利益から書き始めます。
なぜか?BSのところでお話いたしましたが、優良企業になるためには自己資本を増やし、自己資本比率を高めて行く必要があります。そして、この自己資本比率を高めるためには、より多くの内部留保金を用意する必要があります。
たとえば、優良企業に近づくために、今期1000万円の内部留保を行おうと計画したとします。借入金の返済が1000万円、法人税などを約50%とした仮定した場合、経常利益として4000万円が必要になります。
次に、この企業の固定費が前年度で年間4000万、粗利率が70%だと仮定します。すると、『今期は8000万円の粗利益が必要になり、前年度と同様の粗利率の場合では、1億1430万円の売り上げが必要になる』と計算することができます。
ここまで具体的に目指すべき方向を数字で表現できれば、取り組むべき戦略が明確になります。
固定費は一年で大きく変動することはありません。よって、1000万円の内部留保を確保すると目的を立てた場合、粗利益を8000万円以上にするという戦略を立てる必要があります。
そのためには、今年度の売り上げを1億1430万円以上にし、かつ、粗利率は70%以上目指すという具体的な戦略目標を立てることができます。
その後、これを達成するためにより具体的な行動である戦術を立てていきます。
数字に意味を込める。
このように未来のPLを描くことで、目標が定まり、それを達成するための戦略や具体的な戦術まで落とし込むことができます。また、その期末に出る実際no
PLと見比べることで、何が良くて何が悪かったのか評価することができます。
財務力をつけるために、漫然と損益計算書の数字を眺めるのではなく、数字に意味を込め、目的を持って数字を見ることを心がける必要があります。
売上ではなく粗利益を意識する。
未来のPLは、どの程度内部留保を残すか決めることから始めます。これに借入返済額を足せば、必達の当期利益が決まります。
必達の当期利益が決まれば、必達の経常利益も決まります。そして固定費とは、その企業にとって何があっても払わなければならない金額です。
固定費の額は、年間100万円の誤差の範囲で予想できるように最も厳密に算出すべき金額です。
この固定費に経常利益を加えることで、必達の当期の粗利益が求まります。そしてこの必達の粗利益を通年の粗利益率で割ることで、当期に目指すべき売上額が決まります。よく売上額を自慢する経営者の方がいらっしゃいますが、これが全く意味のないことであるということが理解できますよね。
いくら売上額が高くても粗利益率が悪ければ、粗利益は少なくなります。
粗利益が少なければ、固定費は絶対に企業が払わなければならない費用ですので、その分経常利益は減ってしまいます。粗利益を固定費が上回れば、赤字になってしまいます。
よって企業は、『売上を増大させるよりも粗利益を増大させることが大切である』ことがわかります。そのためには『売上を増加させつつ粗利益率も高めていく』必要があります。
売上額と比べるのも、粗利益と比べるものを分けて考える。
粗利益率を上げることは、言い換えると変動費率を低下させることです。
数字を見る際に、その数字の増減を見ることも大切ですが、数字同士の関係を見ることも非常に大切です。数字同士の関係、つまり、比率を見ることで生きてくる数字もあります。
変動費と粗利益は売上額と比較することで生きてくる数字です。
これに対して、粗利益と比較することで生きてくる数値もあります。これらの数値とは、人件費などの粗利益を構成する要素たちです。
確かに、粗利益内に含まれる項目を売上額と比較する場合があります。
例えば、人件費比率(人件費/売上額)がこれに当たります。しかし、業種内で人件費率を比較することもあっても、業種間ではこの比率はバラバラなため比較することができません。なぜなら、業種によってかかってしまう変動費が大きく異なるため、粗利益を構成する要素を売上と比較してもバラバラになってしまうからです。
このように、バラバラで標準化できない数値は非常に使いにくいです。この場合、粗利益を構成する要素は、粗利益と比較することで標準化することができます。
人件費/粗利益は労働分配率と呼ばれます。40~60%の範囲内に収めることが一般的です。これを超える場合は労働効率が悪い(人件費がかかり過ぎ)の状態と言えます。
以上のように、『この数値は何と比べれば標準化できるか』を常に考えながら数字を見ることを心がけます。これを続けていくことで財務力が磨かれて行きます。