攻めのマーケティングと守りのマーケティング
前回は、売上の構造を分解し、売上を上げるために自らが働きかけることができる点(=ビジネスドライバー)についてお話をいたしました。
ここでもう一度、売上の式とビジネスドライバーについて確認します。
「売上高」=「顧客数」×「客単価」×「購入頻度」
「顧客数」=「魅力度を半径としたマーケット円内の消費者数」×「認知率」×「購入率」
よって、
「売上高」=「魅力度を半径としたマーケット円内の消費者数」×「認知率」×「購入率」×「客単価」×「購入頻度」
5つのビジネスドライバー:「魅力度」・「認知率」・「購入率」・「客単価」・「購入頻度」
売上を上げることは一般企業において至上命令ですし、医療法人においても組織を維持していくためには売上を上げなければなりません。しかし、むやみに行動しても売り上げはなかなか上がりません。マーケティングを行う際には、これらのビジネスドライバーを意識して戦術を練る必要があります。そして、このマーケティングには戦略として2つの方向性があります。それは、攻めのマーケティングと守りのマーケティングです。
2つのマーケティングスタイルを、売上を因数分解して求めた5つのビジネスドライバーとの関係から考えてみましょう。
攻めのマーケティング
攻めのマーケティングとは、新規顧客を獲得することや客単価を上げることを意味します。
よって、攻めのマーケティングの際に考えるべきビジネスドライバーは式①と⑦から、「魅力度」・「認知率」・「購入率」・「客単価」であることがわかります。
しかし、医療では客単価をあげようとする活動は、必要の無い検査や治療を増やすことを意味するため、非常に相性が悪いですし、私はそのような行為はご法度と考えております。よって、医療機関経営における攻めのマーケティングでは、新規患者の獲得に全力を尽くすべきと考えております。
守りのマーケティング
守りのマーケティングとは、既存顧客との結びつきを強めることで、購入頻度を高め顧客生涯価値(顧客が一定期間内にその企業の商品やサービスを購入した金額の合計のこと)を高めることです。
守りのマーケティングで考えるべきビジネスドライバーは式①と⑦から、「客単価」・「購入頻度」です。しかし医療において、むやみに購入頻度つまり受診頻度をあげようとする行為はご法度です。結びつきを強くすることで、何か問題が生じた場合には受診してもらえるといった、いわゆるかかりつけ医としての関係を作ることが大切です。
新患の獲得と既存患者を守ることが大切。
前述のように、通常のサービスと異なり、医療においてはむやみに客単価を上げたり購入頻度を高めることはご法度です。よってやるべきことは、攻めのマーケティングによって自院の魅力を周囲に伝え新規患者さんを集めること、守りのマーケティングで既存患者さんとの結びつきを強めかかりつけ医として認めてもらうことの2点です。
では、どちらのマーケティングを優先するかと言えば、まずは攻めのマーケティングを行い新規患者さんを集めを行うことです。患者さんに来ていただけなければ、そもそも患者さんとの結びつきを強める守りのマーケティングを行うことができません。その上で、適切な医療を提供し患者さんに認めていただければ、その噂は口コミで広がって行き、新規患者さんの獲得に繋がります。つまり、守りのマーケティングが攻めのマーケティングに変化するのです。
リソースには限りがあるので、時期に応じて、攻めと守りのマーケティングのバランスを考える必要があります。