経営者の心構え

自分自身を経営する。

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組織の経営者は、自分自身の人生もうまく経営できなければ、一流の経営者とは言えません。

自らを経営する①:『変えられることから変える』

自分が選択することで世の中は変えることができるまず自らを経営するためには、『変えられることに意識を向ける』ことが大切です。有名なスティーブン・R・コビィー氏の『7つの習慣』の第1の習慣である『主体的である』にも挙げられている考え方です。世の中の選択は自分の中にあり、自分が選択することで世の中は変えることができる、という考えに基づきいております。

自分に変えられなことを嘆いたり、怒っても何も産むことはありません。今現在できることは小さいことかも知れないけれど、まずはその小さきことから一つ一ついい方向に変えていくことで世界は変えることができます。自らが選択しなければ、他の誰も自分の環境を変えることなどできません。目指すべきものに向かうためには、まず今の自分ができことは何かを見極め、それを行なって行く以外に方法はないのです。今できることからやる。今変えられることこから変えていく。この一歩が、自分の置かれている環境を変える大きな一歩になります。

自らを経営する②:『自己承認を高める』

次に大切なことは、『自己承認を高める』ことです。自己承認とは、心の奥底で自分の可能性を信じ自分自身を認めていることを意味する言葉です。これは自信過剰と大きく異なります。

自己承認が高い人物は、成功した時に『その成功は周囲のおかげ』と考ます。逆に失敗し時は『失敗の原因は自分にある』と自責の念を抱きます。

自信過剰の人物の場合、『成功は自分のおかげ、失敗は他人のせい』と考えます。つまり、自信過剰な自分は自己承認が低いのです。

自己承認の高い人物は主体的です。また、これまで様々な体験を通じて、成功するときのパターンを無意識に感じ取っています。また失敗した時は、なぜ失敗したのかを分析し、その原因は自らにあると考え、同じ失敗をしないように自分の勝ちパターンを修正して行きます。そのため、経験をすればするほど勝率が高くなり、自己承認はさらに高まって行きます。

自己承認の低い人物は主体的ではありません。また、失敗した時は、その原因は自分ではなく他人にあると考えます。他人に原因があると考えてしまうと、それは自分にはどうすることもできないこととなってしまい、一向に自分の勝ちパターンを修正することができません。そのためまた失敗し、さらにその失敗を他人のせいにするため、一向に自己承認は高まりません。

そして自己承認の低い人物は、そもそも自分自身が自分を認めていないため、自分を認めて欲しいという承認欲求(関係欲求の一つ)が周囲に強く向けられる傾向があります。その結果、自分を認めてくれというアピールが前面に出てしまい、他者を受け入れることができなくなります。そして、他者が自分との比較の対象になってしまい、自分を認めて欲しいあまり、他者を非難する発言を繰り返すようになります。

自己承認が高い人間は、自分自身を自分が認めているので、他者を素直に受け入れることができます。その結果、他者と良好な関係を築くことができます。

自己承認を高めるためには、①主体的にあること、②自責の念を持つこと、③成功体験を重ねること、④社会的意義のある活動を行うこと、が必要になります。自信過剰になってはいけません。謙虚に自分の現状を見つめつつ、自分の可能性を信じ、自分を高めるために行動していくことが自己承認を高めるのです。

自らを経営する③:『欲望をコントロールする』

次に大切なことは、『欲望をコントロールする』ことです。欲には私欲と公欲の2種類があります。私欲とは、自分が良い思いをしたいと思う欲求のことです。公欲とは、自分以外の誰かが喜ぶことに喜びを感じ誰かのために何かをしたいと思う欲求のことです。

決して私欲がダメと言っているわけではありません、私欲も行動を行う原動力になります。しかし、私欲が強すぎてはいけません。特に自己承認の低い人物は私欲が強い傾向にあります。公欲と私欲のバランスが重要であり、もっと言えば、公欲を満たすことで私欲が満たされる環境を作ることが大切です。

スモールビジネスの神様であるマイケル・E・ガーバー氏も私欲をパーソナルドリーム、公欲をインパーソナルドリームと表現し、インパーソナルドリームを持つ起業家は長期的に成功すると述べています。公欲を原動力に動く組織は、周囲からも信頼を集め、長期的に繁栄することがきるのです。

自らを経営する④:『感情をコントロールする』

次に大切なことは、『感情をコントロールする』ことです。特に今回は、リーダーの機嫌についてお話を致します。

2016年、米グーグルは従業員の生産性を高める要因を解明するため、プロジェクトを立ち上げました。そのプロジェクトの名前はアリストテレスです。その結果、グーグルは生産性を高めるための要因として、一つの答えに行き着きました。それは、『心理的安心性』です。心理的安心性とは、組織の中でありのままの自分を表現することができる、素の自分を表現しても大丈夫、と組織のメンバー達が安心感を感じるかどうかを表したものです。例えば、『こんなバカはこと言ったら非難される』や『こんなこと言ったら上司に怒られる』と感じてしまい、思ったことが言えないような状況は、心理的安心性が低い組織ということができます。

そして、この組織的安心性と組織のリーダーの機嫌は密接に関係します。人間の脳にはミラーニューロンと呼ばれる神経の働きによって、他者の感情を読み取りその感情に同調しようとする機能が備わっております。映画を見たときなど登場人物の感情に共感し涙を流すことがありますが、これがまさにミラーニューロンの働きです。そして、組織においてリーダーの感情や気分は、リーダーが思っている以上に組織のメンバーの感情や気分に影響を与えます。リーダーの機嫌が良い組織では、組織のメンバーの機嫌も良くなり、心理的安心性が高まります。その結果、組織としての生産性が上がります。よって経営者やリーダーは、自分の機嫌が組織に与える影響をしっかりと理解し、常に機嫌を良くするようにここがける必要があります。

このような話をすると、『機嫌なんてすぐによくできない』という方がいらっしゃいますが、本当にそうでしょうか?例えば、『ファミリーレストランで注文したのにいつまでたっても注文が届かず、確認すると注文が抜けていた』、という状況での感情について考えましょう。人によっては多少いらっとしてもミスはしょうがないと思い笑顔で、『なるべき早く注文を持ってきてください。』と対応することもあるでしょう。また人によってはそのイラついた気持ちを前面に出し、『早くもってこい!』と怒鳴る対応をする方もいらっしゃるでしょう。別に怒るなとは言いません。ここで言いたいことは、感情に関わらずそのときの対応は自らが選択できることです。起きた出来事は『注文が漏れてしまった』でしかありませんし、求める結果は『最優先に注文を持ってきてもらえる』でしかありません。前者の方は注文を優先してもらうために笑顔という態度を用いた、後者の方は怒りという態度を用いたにしか過ぎません。つまり、起きた出来事をどのように捉え、その次に望む結果を導くためには自分がどのような行動を取るべきかは、自らで選択できることなのです。

これは経営者や組織のリーダーにも言えます。起こっている出来事が何であれ、組織の生産性を高めるために経営者の機嫌が良いことが必要であるならば、機嫌を良くするという態度を選択すれば良いのです。そして、機嫌よく振舞っていると自然に機嫌も良くなってきます(末梢神経起源説)。

プライベートで何があったとしてもそれは組織にとっては関係ないことです。組織とってそれが有益であれば、経営者は自分の機嫌が良くいることを選択するものです。時には戦略的に憤りを示すことが必要な場合もあります。出来事に反射的に対応するのではく、自分の機嫌を戦略的にコントロールすることも経営者やリーダーには必要な力です。

自らを経営する⑤:『マイナスの感情と向き合う』

経営者は感情をコントロールすべきといっても、やはり人間である以上、どうしてもマイナスは感情が湧き上がってきてしまう時があるのも事実です。特にこのマイナスの感情でコントロールすべきものは以下の5つです。

1)不安

『不安』について考えるとき、似たような言葉である『恐怖』と対比して考えるとわかりやすいです。恐怖とは、ある対象に怯えることを意味しています。この場合、恐怖を抱いている対象が明確になっているので、その対象に対してどのように対応すれば良いかを考えることで、恐怖感を軽減させることが可能です。しかし、不安とは、対象が明確になっていない事柄に対して抱く怯えを意味しています。対象が明確になっていないので、どうすればいいか分からず、不安感は募るばかりです。

ここまで分かれば、不安に対する対応が分かってきます。それは、不安の対象を可能な限り明確化することです。そのために可能な限り情報収集を行い、想定される状況をシュミレーションします。そのシュミレーションの中から起こりうる問題やその解決策を整理していきます。そして、シュミレーションの中で最悪な状況を明確化しておきます。あとは、その最悪な状況を受け入れる覚悟を持つことです。つまり、不安から逃げずに正面から向き合った方が楽だということです。不安という感情も、出来事に対する自分の捉え方でしかありません。与えられた環境をどう捉えるかは、結局自分が決めることなのです。

2)怒り

『怒り』は何かの行動を起こすための原動力になり得る感情です。『怒り』は非常に強いエネルギーを持っています。つまり、怒りをうまくコントロールすれば、行動を起こすための引き金に変えることができるのです。そのためには、怒りの状態について深く理解する必要があります。怒りには、『私憤』と『公憤』の2つがあります。

⒈ 私憤

私憤とは、自身の個人的な事柄に関する怒りです。私憤が起こる時、その背景には自分の価値観やその出来事に対する期待が隠れています。

『なんでこんなことができないのか?』→『こんなことはできで当たり前』

『なんでこんなことが起こるのか?』→『こんなことが起こるはずがない』

私憤が起こる原因には、自分の考えが世の中のスタンダードである(=フォールコンセンサス効果)と思ってしまうことが挙げられます。しかし、人それぞれ当たり前は異なります。人それぞれの価値観や期待があるのです。つまり、私憤を感じた時、『そもそも自分は何に怒りを感じたのか?』などその怒りを分析することで、背景にある自分の価値観や期待を知ることができます。この分析を行うことで、頭に登った血が下がり冷静に状況を見直せる状態を取り戻すことができます。怒りについて感情優位から理論優位に変えるのです。

そしてこの分析を結果、今その場で怒りを表現する必要があるかどうかを考えます。その場で表現する必要がなければ時間を置き、冷静になる時間を取り戻します。その場で怒りを表現する場合も、怒りを感じる出来事が起こってしまった原因の多くは、コミュニケーションの不足が原因であるため、その原因に対して怒りを表見するようにします。決して相手の存在を非難してはいけません。お互いの価値観や立場が違うことで生じてしまった誤解が原因と考え、その誤解を解きほぐすことに集中します。この前提として、そもそも悪気があって人を怒らせようとしている人物はいないということが挙げられます。話し合いの結果、明らかに悪気があっての行動であれば、それ以降取引を行わないようにすれば良いのです。そもそも怒りを感じる価値すらありません。

大切なことは、己の好き嫌いに左右されず(感情に左右されず)、その人やその出来事の価値観や立場を理解し(理論的に考え)、その状況を話し合うことです。

⒉ 公憤

公憤とは、社会の問題や悪に対して自分の利害を超えて感じる怒りです。公憤を感じる時、その背景には『この世の中を良くしたい、この社会を良くしたい』という公欲が隠れています。つまり、公憤とは公欲の裏返しです。よって公憤は、人を惹きつける力があり事業を動かしていくエネルギーを持っています。

ところで、なぜ公欲や公憤には人を動かす力があるのでしょうか?それは、公欲や公憤には物語があるからです。

当院を例に考えてみましょう。当院はGoalの1つとして『平均寿命と健康寿命の差をゼロにする』ということを掲げています。これを掲げた理由はいくつかあるのですが、その1つに、今の世の中には高齢化が良くないと感じさせる風潮があることがあげられます。少子高齢化とひとまとめにして不安を煽るような報道が多くなされることも原因の一つです。断言しますが、高齢化は悪いことではありません。むしろ、高齢化が達成できたことは医療が発展した一つの喜ぶべき成果です。医療に携わる人間の1人として、高齢化が悪いと感じさせる風潮に憤りを感じております。問題なのは、平均寿命と健康寿命の差を10年から縮めることができず(この20年近くこの差は縮まっていません)、どうしても人の手を借りなければ生きていけない期間が10年もあるということです。高齢になり人の手を借りることはしょうがないことですが、できることならいつまでも元気でいたいと思うのが人の心情です。高齢になると元気が無くなってしまう、人に迷惑もかけてしまう、だから高齢になりたくない、これが高齢化を悪いものと考える背景の一つにあると考えております。なら、いつまでも元気でいればいいのです。つまり、高齢化から一歩進んで、健康長寿化を目指せばいいのです。その一つの答えになるような病院を作ることが当院のGoalです。このような物語が当院にはあり、嬉しいことに、この物語に賛同してくれる人たちが集まってきてくれております。

公憤は事業を起こし動かす原動力になり得るものです。自分が何に公憤を感じるかを見つめると、新しい事業を生むきっかけにもなります。一度、見つめてみることをお勧めします。

3) 恥ずかしい

恥ずかしいと感じる行動の中で、感謝する、褒める、という行動は、本来もっと積極的に取り組むべき行動です。恥ずかしいと感じてできなかった行動を、これまでに後悔したことはいくつあるでしょうか。純粋にすごいやありがたいと思ったことにはその感情を示すようにしましょう。そうすることによって、自分のキャラクターも変わっていき、これらの感情を表現しやすい存在になっていきます。

4)当たり前

自分にとっての当然は相手にとっての当然ではありません。自分が当然と思っていることが、どれだけ有り難ことなのか見つめ直しましょう。この当然を見直すことが、感謝の気持ちに繋がっていきます。

5) 面倒くさい

この面倒くさいという感情を克服することができれば、様々ことが好転していきます。

なぜ面倒と感じるのでしょうか?それはその行動に困難さを感じるからです。『何か選択を迫られた時、難しいと感じた方を選択するようにしなさい。一度簡単と感じたことを選択するようになると、それ以降その選択をするようになってしまう。しかし、困難な道を選んだことは、必ず誰かがそれを見てくれている。評価してくれる人が必ずいる。少なくとも自分自身がそれを知っている。だから頑張れ。』これは私の尊敬する方がおっしゃっていたことです。『険しい道を選んだことを必ず誰かが見ており、それを評価してくれる日が必ずくる、だから頑張りなさい。』という意味のお言葉ですが、この中にもう一つ大切なことが隠れています。それは『その険しい道を選んだことは自分自身が知っている』ということです。

以前、自己承認というお話をいたしました。自己承認が高い人物は『他者を受けれることができ、また自責の念から自分の中での勝ちパターンを持っているため人生における勝率が高い』というお話をいたしました。そしてこの自己承認を高めるためには、自分自身との信頼関係を高めていく必要があります。この自分自身との信頼関係を表す言葉が自己効力感です。

自己効力感とは、『自分は目標を定めると達成できる人間である』というセルフイメージを意味する言葉です。このセルフイメージは、成功体験を重ねることで熟成されていきます。先ほどの話で安易な道を選んでしまうとことは、自分の中での失敗体験になってしまうため、この自己効力感が下げる行為に繋がります。困難な道を選択することは、それ自体が自己効力感を高める働きがあり、またその困難な道を達成することで、さらに自己効力感が高まるのです。そして自己効力感が高い人物は、困難な状況に出くわしても『自分は目標を定めると達成できる人間である』という自己認識からその困難は状況を打破する道を見つけ出し、困難を克服していきます。その結果、また自己効力感が高まっていきます。自己効力感が高い人物は、自己承認もできているので、他者を受け入れることができ、人限的信頼も集めていきます。その結果、誰かが見てくれる存在になるのです。

はじめこのお言葉を頂いとき、「へぇ〜」ぐらいの感動しかありませんでした。(すみません。)しかし、お世話になった方のお言葉ですのでそれ以降その教えを守り生活を行なっていました。そんなある日、ふと上記の内容のことが頭の中に浮かんできた時、いわゆる「アハッ」体験を味わいました。自己効力を高めるために、困難と思われる道を選択するようにしましょう。

自らを経営する⑥:『怒るのでなく叱る』

以前、経営者やリーダーは戦略的に自らの機嫌や気分をコントロールする必要があるというお話をいたしました。その時に、組織の生産性を上げるためにはその組織のリーダーは機嫌よく過ごさなければならない、というお話をいたしました。その中で、時には憤りを示すことも必要であるというお話もいたしました。この憤りを示す際に注意しなければならないことがあります。それは『怒るのでなく叱る』ということです。

怒るとは制御できなくなった怒りを相手にぶつけることを意味しています。これは、非常に感情的な行動であり、自らの不快感を相手に投げつけていることに他なりません。言い換えると、自分にとって不都合な出来事に腹を立てている行為です。よって焦点は自分にあります。

これに対して叱るとは、相手のことを思いその行動や言動を正し諭すことを意味しています。これは理性的な行動であり、相手に対する思いやりや公欲から生まれる行動です。焦点は相手に注がれています。

よって憤りを示す時、その前提として相手を尊敬していることが必要があります。その上で、憤りを感じた点を正せばもっと素晴らしい存在になれるという思いを込めて相手を叱る必要があります。つまり、相手の存在を肯定した上で、問題となっている部分を叱るのです。この時、その叱り方もこのことを示すものでなくてはなりません。よく言われるのが、サンドイッチ方式です。

① まずは相手の労をねぎらい、その存在を認める。

② その後、憤りを感じた部分に対して指摘し、諭す。

③ 最後に、相手の可能性を信じている旨を伝え、褒め、肯定し、会話を終える。

最初に肯定することで相手の心を開かせ、こちらの指摘が入る余地を作ります。その上で指摘を行い、最後に可能性を信じているから叱ったということを伝えることで、存在を肯定します。この最後の肯定がないと、叱られた側は存在を否定されたと勘違いする可能性があるため、非常に重要です。

これらのことは決して簡単なことではありませんが、これらのことができて初めて一流の経営者と呼ぶことができます。

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